ククルス・ドアンの島を見た

 ヤギが強い。

 

 基本のストーリーラインは一応1stの「ククルス・ドアンの島」なんだけれど、後半になるに連れて「オデッサの激戦」要素が増えていくので、見終わった頃にはオデッサ戦がもう終わったような気分になる。あと回想シーンで今回の作画で作られた1stガンダムの記憶が捏造される。

 マ・クベ大佐の条約違反が一番わかり易いオデッサ成分だけれど、褐色のサザンクロス隊もわりとオデッサ成分が強い。ホバー移動する機体に乗った「茶色い南十字星」なので、露骨なまでに黒い三連星の代用品という感じ。

 ポケットの中の戦争を要素ごとにバラバラにして組み替えたら今回のククルス・ドアンになるんじゃないかという気がした。主人公のザクと子供と脇役のガンダム。ついでに南極条約違反。そういう意味ではドアンに死んでもらったほうが話はきれいに収まる感じもあり……。まあ原作で生き残るから殺すわけにはいかないのだろうけど。

 冗長さはあるものの、やはりUCとか閃ハサじゃなくて一年戦争からしか摂取できない栄養があるなという感じ。あと、安彦作品の味が強めに出ているので、そのへんで好みは分かれそう。個人的には戦争ものでもちょいちょいギャグを挟んでシリアスになりきらない安彦味が嫌いじゃないので、今回の映画は良かったなという感じはある。

 戦闘は、UCや閃ハサのリアルっぽい演出とは明らかに違って、チャンバラとしてみていて楽しい演出。MS格闘技で右手を光ってうならせるようなアニメを期待しているとがっかりする。なんでヒートホーク持っているんだお前。MSの殺陣が歌舞伎とか時代劇とか、そういう感じの演出になっている。ザクが六法を踏んでるような場面もあったし。サザンクロス隊も山田風太郎とかの時代小説に出てきそうな雰囲気がある。Gの影忍かな? ラストでガンダムが登場したときは、あまりのヒーローっぽさに拍手したくなるくらい。

 島の位置が太平洋の架空の島から大西洋の実在の島に変更になってしまったので、原作とだいぶ雰囲気が違う。原作の方はもっと緑が豊かで生きて行くのが簡単そうだったけど、映画の方は火山島で不毛度が高くて貧困という感じ。あれは基地の補給物資がないと生きて行けないだろうなあ。

 WB隊は今回も中間管理職ブライトさんが大変そう。これの前に見たガンダム映画が閃ハサだったので、若いうちからこんなに苦労してるのに、子どもが成長してからもっと苦労するなんて、ブライトさんの人生って一体っていう気持ちになる。

 マ・クベとゴップの狐と狸の化かし合いみたいなやり取りもわりと良かった。ゴップ、何もしてないのに有能そうな雰囲気だけ出ているのが面白い。スレッガーさんも戦闘ではほぼ役立たずだったわりにかっこいいのでずるい。「パリは燃えていないのだな」、「私の部下にも文化を愛するものがいた」っていうマ・クベ大佐、ちょっと嬉しそう。壺の人だしな。