見たテレビアニメとか特撮とか映画とか(2023年秋クール+)

 このクールは、『ゴブリンスレイヤー』と『最果てのパラディン』と『フリーレン』がそれぞれにエルフの話をやっていて、ステレオタイプに収まる範囲の差異みたいなのがあってちょっと面白かった。

 

 

テレビアニメ他

『王様戦隊キングオージャー』

 最初の方から中盤くらいまでは結構見ることが多いんだけど中々完走しない戦隊もの。前回の『ドンブラザーズ』も中盤くらいで挫折してしまった。調べたら前回完走したのが『キョウリュウジャー』で、その前は『シンケンジャー』だった。

 前作が破天荒が極まった『ドンブラザーズ』だったから、一見真っ当な戦隊に見える気がするけれど、一話完結のストーリーが少なく大河ドラマ的なストーリー展開をしていたり、各国の王である主人公たちが中々集まらないし協力しないなど、本作も戦隊のフォーマットとしてはだいぶ挑戦的というか異端な作りをしている。舞台が地球ではなくチキューという遠くの惑星なのもまあまあ珍しかったんじゃないだろうか。

 キャラクターとしては主人公ギラの兄ラクレスが結構面白かった。前半から中盤にかけては、もしかしたらあえて暴君を演じているんじゃないかと思わせる演技がとてもよかったし、終盤に全ての事情を明かしてからの、自らのできる役割を全うしようとするちょっと生真面目な姿もよかった。嘘をつくのが上手すぎて人望のない悪役をやっているラクレスと、嘘をつくのが下手すぎて人望を集めてしまうギラという兄弟の対比だった。

 ラクレスやデズナラクといった前半から中盤にかけての悪役はそれぞれ人物の背景があって面白かったけれども、それと比較するとラスボスのダグデドはキャラが薄かったような気もする。まあキャラが単純で薄っぺらいことがダグデドの個性で、後半はそんな子供じみた悪役に振り回される悲劇を描いた話といえばそうなんだけど。

 終盤の五王国奪還戦、結構ピンチな展開なんだけど、ちゃんと楽しくて毎回気持ちよく終わったのですごい。ゼロワンのお仕事五番勝負でこれが見たかった。

 

『ひろがるスカイ!プリキュア』

 初めての男子と成人のプリキュアという触れ込みだったけど、蓋を開けてみたら鳥のプリキュアと赤ちゃんのプリキュアも発生していた。

 あげはに関して、『スマイルプリキュア』のときは父の日に母子家庭を扱ったけど、離婚によって姉妹が分かれる展開を入れてくるのは現代的だなあと感じる。大人だからこそ笑って話せる昔の話でもあるということかもしれない。

 プリキュアは2人で一組なので新しいプリキュアもセットで出すという基本思想から少年と社会人女性の組み合わせはだいぶエッジが効いていた。エルちゃんはこれからカイゼリンとかけがえのない2人になっていくのだろうな。

 プリキュアの設定がやや挑戦的だった反動か、物語としては最終的にすべての悪の責任をスキアヘッド一人に背負わせて追放するというひどくシンプルな構造でちょっと拍子抜けした(作中イベントとしてクリスマスがギリギリだった上に正月はまるごと潰したのに)。『デリシャスパーティー』ともやや似るけど、あっちは悪役に贖罪の道を残したしなあ。

 今回のシリーズでは、一番魅力的な悪役はやっぱりバッタモンダーだったと思う。敗北後の彼が自らの人生観に基づいてましろに掛けた呪いの言葉が、本来の意味を超えてましろを勇気づけ、さらにはそれがバッタモンダー本人にも帰っていくという構図はなかなかに良かった。

 

『ウルトラマンブレーザー』

 「悪役星人V99~私は黒幕ですがラスボスではありません~」

 すごくうるさくて野性的なウルトラマンという、これまでとは一味違った性格のウルトラマンブレーザー。戦闘スタイルも独創的かつコミカルで、怪獣プロレスコントとでも呼びたくなるような面白さがあった。ウルトラマンの苦闘がそのままギャグになるという、これまで考えてもみなかった新しいウルトラマンの魅力を描いていたと思う。2話で光の釣竿を作って怪獣を一本釣りした上に串焼きにしてとどめを刺したのは衝撃的だった。

 物語は、前半ではSCPや因習村的な怪異譚、さらには日本神話などをモチーフにした多様な怪獣たちが登場し、後半では怪獣のいる世界に住む人々(あるいは怪獣たち)の生活にスポットを当てたストーリーが展開された。ただ、前半と比較すると、後半は日常的な要素にフォーカスした結果、スケール感や派手さに欠けるところがあったかもしれない。

 4話は怪獣というよりも怪異に近いデザインで、手順の決まった対処法があるというSCPオマージュな回。黒幕の社長があからさまにイーロン・マスクなんだけど、発端が公的機関のずさんな公文書管理で、マスク自身は文書管理をきちんとしなくてはいけないと思ってるあたり、だいぶ風刺が効いていた。

 7-8話の「虹が出た」前後編は、ニジカガチというヘビの名前を持ち、尻尾には剣がついているという、明らかにヤマタノオロチと草薙の剣をモチーフにした怪獣が、伊勢と思しき土地に現れるという古事記真実な回。怪獣復活のために暗躍する謎の教授とかが登場したりして、諸星大二郎の『妖怪ハンター』とか『暗黒神話』に近い雰囲気があった。

 9話、侵略に来た地球で音楽に魅せられ、音楽の力で地球を侵略しつつも、音楽が消えてしまわないように自分たちを止めてほしいと願う宇宙人。彼らの演奏をBGMとして静かに進行する物語。今回のシリーズで一番良かったのはこの回だと思う。なんかものすごいものを見てしまった。

 2クールを掛けたV99をめぐるストーリーについては、最終回は文句なしの出来と言えるけれども、ちょっとテーマがぼんやりしていたように思う。特に後半はV99関連の謎が全て最終回まで持ち越された結果、何かが起きているというほのめかしだけをずっと見せられ、その間に主人公の所属するSKaRDは成績不振を理由にどんどん閑職に追いやられていくという、ややストレスフルな展開が続いた。ウルトラマン自体も最後まで正体不明な上に、途中でよくわからない合体をしてパワーアップしたり、全体に説明不足で退屈な感じを受けた。

 最終回は悪役の居ない物語だったというか、コミュニケーションの齟齬というかそれぞれの立場の違いだけがあった。ウルトラマン、宇宙からの怪獣とそれを送り出したV99、地球の怪獣、防衛隊の上層部、現場で働くSKaRD、それぞれがそれぞれの立場で行動した結果の衝突であり、和解だったと言える。

 映画版も見たけど、TV版の延長みたいな雰囲気だった。今回はウルトラマンも地球から去ってないし、地球怪獣と宇宙怪獣と人間がそれぞれ対立しているというのもフォーマットとして綺麗にまとまってるので、作ろうと思えばいくらでもシリーズ続けられるんじゃ。

 

『ゴブリンスレイヤーⅡ』

 2期になって急速にゴブリンスレイヤーに社会性が芽生えてきている。

 これまでゴブリンを殺すことだけに心血を注いできた彼が、仲間を得て、冒険の楽しさを知り、はじめて自分の人生を振り返るゆとりを手に入れた。その上で、自分にもあり得たかもしれない人生や、自分とは全く違う人々の生き方を通して、自分の人生もそんなに捨てたものではないと納得する話でもあったような。選ばざるを得なかった道を改めて自分の道として選び直す感じ。

 ゴブリンスレイヤーはパロディ作品としてみると、先行作品からのネタの拾い方がニンジャスレイヤーと近いんだよな。

 

『最果てのパラディン 鉄錆の山の王』

 英雄と竜の戦いを真正面から描いたシリーズ。単純に強いばかりではなく、巧みな弁舌をもって格の大きさを示す太古の邪竜ヴァラキアカが倒すべき敵としてとても魅力的な存在として描かれていたと思う。土壇場で主人公ウィルを巡る神々の三角関係ラブコメが始まったのは笑った。
 ドワーフのルゥは多分結構若いんだろうけど、ドワーフらしく髭を生やしているせいで、どうしてもうらぶれた中年オヤジに見えてしまう。ドワーフステレオタイプを外すのって結構難しいのかも。

 

『MFゴースト』『オーバーテイク!』

 MXだと二つセットで車アニメ枠を構成していた。舞台もご近所で、『MFゴースト』が箱根で、『オーバーテイク!』が御殿場。ついでにどちらもCV畠中祐が主人公をサポートしている。『MFゴースト』を見ていると、これ前回『オーバーテイク!』で習った単語だ、みたいなのが発生して面白い。逆もまた然り。

 『MFゴースト』では、富士山の噴火による火山ガスの充満というSF的設定の上で公道レースというおバカ競技が成立してて、そこで格下の機体に乗った主人公が活躍するという流れなので、大まかな感触はわりとガルパンに近いところがある。

 時代錯誤的なエンジェルの描写を筆頭に女の子が邪魔。原作者としては重要なんだろうけど、見る方としてはノイズでしかない。ただアニメスタッフがなんとか原作のキャラを可愛く描こうと努力しているなというのはわかる。

 『オーバーテイク!』はMマスアイドルがシャニマスPをやってるような雰囲気のアニメ。地味だけど面白かった。けどやっぱり地味だなあという感じ。F4レースでの勝利を目指す少年という表のテーマの裏に、3.11の死者の記憶を引きずるカメラマンというもう一つのテーマを配置して、それを「応援」という言葉でつなげた構成は悪くない。けどやっぱり手堅くまとまりすぎて地味。

 

『アイドルマスター ミリオンライブ!』

 2期は?

 モバマスの方の民だったので、ミリマスの方はこれまでほぼノータッチだった。アニメとはいえ一度にトランプ並みの人数(13+39)を覚えるのは厳しい(いや13の方はよく知ってるけど)。みんな徳川まつりくらい外見にインパクトがあればまだしも、結構差分が細かいキャラが多いのも厳しさに輪をかけている。七尾百合子と最上静香と北上麗花が別人なのはまだなんとかわかるけど、ロコと箱崎星梨花はバラで出されると見分けがつけられない。

 ミリマスアニメ、U149、デレマスアニメを比べると、組織の規模による意思決定の違いとか、裁量権があることの重要さみたいなものが、わりと物語の根っこの方にある感じがする。U149はあそこまで実験的なプロジェクトなら別会社化して子会社にやらせたら良かったんじゃないかな。

 

映画

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』

 映画館を出てから、「桜ルート ゲゲゲ」でツイッターを検索して、みんな同じこと思うよなというのを確認した。間桐さんちは最小単位の因習村。

 さよちゃん、最初から最後まで因習村脱出RTA走者で、水木にはその必死さと幼さが見透かされているので、同情はされるし、保護の対象でもあるけれども、性愛の対象ではない(だから処女性は問われない)。そのことに本人が気づいていればあるい別の道があったかもしれないとも思うが、ずっと性愛の対象として搾取され続けてきた彼女にはその視点を持つことは難しかったかもしれない。彼女には差し出せる賭け金は自身の身体しかなかった。

 水木は戦争経験のせいでシニカルな現実主義者になろうとしているけれど、本質的にはそこまで利己的になれない人間なので、いざとなると情に揺れてしまう。そのゆらぎが彼を主人公として魅力的な人物にしていたのだと思う。