休暇の記録
10年くらいぶりに長めの休みが取れたので、眺めのいいところに行ってきました。
一日目
ここで同行する頬付さん、DG-Lawさんと合流。
まず最初の目的地は荒船山。
荒船山
遠くから見るとゼルダの伝説BotWの始まりの台地っぽいかたちをしている荒船山。今回最初に登る山。
上まで登ると浅間山(たぶん)がよく見える。
登山道は非常によく整備されていて歩きやすく、サンダルでも行けそうな気がしてしまうけれど、頂上の手前にちょっとした岩場があって、そこだけは登るのにやや注意が必要。
本当はサンダルでてっぺんまで行ける山にしたいんだろうなと思うくらいには道の整備が徹底していたが、岩場の方も岩場の方で、ここを簡単に通れるようにするには相当の大工事が必要になるだろうなと感じる程度にはややこしい岩場であった。
遠くから見た通り、頂上は平べったくてだだっ広い公園のような風景が広がる。あんまりに平べったいので地図を見てもどこがピンポイントな「頂上」なのかがわからないほど。なので少し歩いて荒船山よりちょっと高い隣の経塚山まで登って、頂上へ登った感を出してから下山した。
登山口の側に荒船風穴への案内看板が立っていたのでついでに付近を観光することに。
荒船風穴
荒船山の近くにある荒船風穴。
ここは沢筋に崩れた岩石が積み重なった場所で、冬の間その岩石の隙間につららができ、そのつららによって空気が冷やされ夏の間も涼しい風が吹き出す場所……らしい(わかったようなわからないような)。実際に近くに寄ってみると明らかに空気が冷えているのがわかってちょっとおもしろかった。
で、その風が出る穴の上に小屋を立てて蚕の卵を冷蔵保存していた施設の跡地が上の写真。蚕の卵は冷蔵することで蚕が孵化する時期を調整できるようになり、それまで年に1回きりだった蚕の飼育を数回に渡ってできるようになったのだという。二毛作みたいなものかな。
年1回だった蚕の生産量が単純に2~3倍になるわけで、ここでの蚕の冷蔵は日本の絹の生産に多大な貢献をしたらしい。風穴自体は日本各地にあったらしいが、規模としては荒船風穴が桁違いに大きかったらしく、当時は「風穴界の覇王」と呼ばれていたという。覇王か……。ただ、交通不便な山中のこともあって、後々の技術発展によって冷蔵庫などで蚕の孵化をコントロールできるようになると、こうした風穴は使われなくなっていったそうな。
というわけで実はここは絹の大量生産と大衆化に貢献した施設として富岡製糸場とセットで世界遺産となっているすごい場所だったりする(自分も行ってみて初めてその存在を知ったのだけれど)。
ただまあ観光地として見た場合はちょっと微妙な場所かな感は否めない。当時の資料とかは麓の下仁田町歴史館の方に集中しているらしいし、かつて建っていた小屋はとっくの昔になくなっているし、ジオラマ模型による解説とかのキャッチーでわかりやすいものは富岡製糸場のほうが充実していたし、立地的にも富岡製糸場のついでとして寄るには遠すぎる。今回みたいにたまたま近くを通りがかったときとかについでで寄るくらいがちょうどいい場所かなと思う。
逆に考えると、富岡製糸場からこんなに遠くて不便な場所にわざわざ卵を保存しに来るくらいの価値があった場所ということでもあるのだけれど……。
神津牧場
荒船風穴のすぐ近く、明治の昔からある由緒正しい山岳観光牧場(普通の牧場としてはどうあがいても採算が取れなかっただけとも言う)。運営母体が公益財団法人というあたりからも収益薄そう感が強い。牧場の歴史を見ると設立直後から持ち主を転々としていて、よく今まで潰れずにやってこれたなという感想を抱く。
ここではホルスタインではなくジャージー牛を飼育している。ジャージー牛はホルスタインよりも牛乳の生産量が少ない代わりに、牛乳に含まれる脂肪分が高いのが特徴らしい。実際にここで作られたソフトクリームを食べてみると、固形の牛乳を食べているかのような濃厚な味がした。うまい。このミルクでチャイとかミルクティーとか入れたらおいしいだろうなと思う。
牛さんをたくさん見たので夕食は牛しゃぶになった。
二日目
前掛山
二日目は浅間山……の外輪山の前掛山登山。浅間山は火山で立ち入りが規制されているので登れない。
前日に麓の浅間山荘に泊まってそこから出発。
ここの温泉は鉄分が豊富でお湯が真っ赤。白いタオルも赤く染まる。鉄なのでお湯からは血の匂いがする。いいお風呂だった。
聖地巡礼的な意味ではバーナーとカップラーメンを持ってきて山頂で食べるべきだったかもしれない。
浅間山の様子。雪の残り具合が心配だったので、一応チェーンスパイクを持っていくことにした。結果から言うと、チェーンスパイクがあると安心だけれど無くてもまあなんとかなる感じだった。この日は気温が高かったこともあって、行きは雪が多くてチェーンスパイクを使う場面もあったけれども、帰りにはもうわざわざ使うまでもないかなというくらいに解けていた。
登山道の途中にある小川。鉄分で真っ赤に染まっている。汲んで沸かせばそのまま温泉になるんじゃないかな。
火山館。噴火時のシェルターも兼ねたちょっと珍しい自治体運営の山小屋。水の補給とトイレの利用ができる。
頂上手前の登り。足元はジャリジャリして歩きにくいし、斜度はそれなりにきついし、もう少し先へ行くと残雪もそこそこあるし、ゴールはなかなか見えないし、この登山で一番きつい難所だった。
右が外輪山の前掛山。左には浅間山がある。左へは行けないので右へ。
前掛山の頂上と浅間山。
頂上から下を見ると、噴火用のシェルターが見える。
頂上からの眺め。
頂上はちょっと風が強いので、写真を撮るだけ撮ったらシェルターのあるところまで降りて昼食を食べてから下山。
下山時にちょっと山の降り方を思い出してきたので、重力に身を任せてとっとこ歩いていったら、だいぶ速度が出た。この登山コースの標準タイムが行き帰り7時間半のところを90分ほど縮めて6時間でゴール。あとでYAMAPで歩行ペースを確認したら、下山のときだけ標準のペースの250%くらいの速さが出ていたらしい。登りはだいたい標準のペースだったのでほぼ下りで時間を短縮したらしい。
布引観音釈尊寺
浅間山から降りて汗を流すために浸かった温泉のすぐ側に珍しい建物のある寺院があるらしいということで寄ってみた山。遠くから見た感じ、いかにも修験者が好んで修行しそうな岩山だったし、実際に表参道から15分くらいがっつり登るちゃんとした山だった。山中に不動明王や愛染明王が祀ってあったりして、いかにも元修験道という感じがある。
この寺院は「牛に引かれて善光寺参り」のスタート地点で、善光寺に参らせた牛の正体はここの観音だったらしい。そういうわけで結構歴史のある寺なのだけれども、写真の通りお城を作るのに便利そうな岩山の上に建てられているせいで、武田信玄に焼かれたり山城として整備されちゃったりしたらしい。
ねこです。
わざわざここまで登ってきたお目当ての建物、観音堂。京都の清水寺などと同じ懸造の建物。こういう崖っぷちに寺院を建てる際の様式で、磐座信仰から発展し、信仰の対象である磐座の上に建てられたもの……というような話を同行のDGさんから最近よく聞いていた(懸造の詳しい話はそのうちDGさんがブログに書くだろうと期待)ので、折よく実物が見られたのはなかなか感慨深いものがあった。なお、そのDGさんはさっきの猫の写真を撮っていたら携帯の電池が切れてしまい、肝心の観音堂の写真は撮れなかった模様。
柱の根元はこんな感じ。
観音堂の内部。たぶんこれが牛に変化したという観音菩薩だと思う。
croissance
夕食。佐久平駅近くのレストラン。
一日目の夕食で行こうとしていたのだけれど、あいにくの定休日だったので二日目の夕食に。浅間山からの下山途中に電話をして、たまたま当日キャンセルが出たから滑り込めたというなかなかアレな予約だった。おいしいご飯を食べたいならもう少し計画性を持つべきだ、と毎回反省している気がする。
通常は前日までの予約が必須、前日が定休日の場合は前々日までに予約が欲しいところらしい。次はきちんと予約します……。
お店の規模が大きくないのに加えて、今は店主と皿洗いなどのお手伝いの人の二人で回しているそうで、あまりたくさんお客さんも入れられないのだとか。今度は一週間以上前に予約しよう……。
味の方は写真を見れば大体わかるかもしれないけれど、ものすごくおいしい。ここで食事をするためだけに東京から新幹線で往復する価値があるかもしれない。信州の地元の食材を使った料理や地元のワインを売りにしていて、そのために野菜の使い方がとてもうまい。私はこの日、生まれて初めてウドをおいしいと思いました。
飲み物はもちろん地元のワイン……ではなくてノンアルコールドリンクを選択。写真のものはキャラメライズド・ペアー&コンブという名前で、メニュー表によれば、梨、コンブ、チャイ、オリーブバニラ、アカベが入っているらしい。ノンアルコールドリンクでコンブというのが気になって飲んでみたけれども、たしかにコンブ。だけどちゃんとドリンクとして成立してるし、何よりとても香りがいい。そしてコンブなので魚介類とすごく相性がいい。こういう飲み物もあるのだなあという驚きがあった。
食後のお茶もハーブティーを頼んだら青いお茶が出てきて、最後まで驚きと楽しさのある食事だった。
そうそう、マカロン食べたのもこれが人生で初だった。優勝した力士が受け取っているところはよく見るけれど、こういうお菓子だったのか。
三日目
セゾン現代美術館
二つ山登ってだいぶ疲れたので三日目は普通に観光。
ここは一部の作品が撮影可という珍しい美術館。というかこの日の展示は一部を除いて撮影可という感じだった。壺の子がかわいい。
自分のような現代美術素人でもそれなりに分かったような気になれる展示構成になっていて、流石にキュレーションがしっかりしているなあと思った。
ここのカフェの麻婆豆腐がおいしいとzaikabouさんのブログにあったので昼食はそれになった。美術館併設のカフェで出てくるメニューとは思えないほど香辛料がよく効いていてバリバリにしびれる。おいしかった。
富岡製糸場
観光の2件目は富岡製糸場。世界遺産になったことは知っていたけれども、どうして世界遺産になったのかは知らなかったのでわりと真面目に勉強になった。そもそも日本が世界でも有数の生糸輸出国だったというのを知らなかったという……。
当時の(といっても明治から昭和の後期まで使われた施設なので当時の幅がだいぶあるが)女工さんたちが暮らしていた木造の寄宿舎なんかもかなりボロいながらもよく残っていて、どことなく学校のような雰囲気もあった。実際に女工さんに向けて授業をしていた時期もあったらしい。
DGさんはここで離脱。自分と頬付さんは四日目の至仏山へ。
四日目
至仏山
ここは雪山登山になることが予想されたので、念のためにモンベルの一日保険に入っておいた。アイゼン使うようなところは1000円らしい。ついでにYAMAPの登山計画機能を初めて使ってみた。ポイントを指定するだけで自動的に登山経路と所要時間を計算してくれて、そのまま自治体に登山届として送信できる上に、同行者がYAMAPユーザーの場合は自動で登山計画を共有してくれる。めちゃめちゃ便利。もっと早く使えばよかった。
至仏山には朝からスキーやスノーボードを抱えたバックカントリー勢がたくさん来ていて、それだけ見ると普通のスキー場のようにも見えるけれど、彼らはこれからこの板を抱えて(あるいは履いたまま)山のてっぺんまで登るのだ。
ざっと見た感じ、だいたい6~7割位がスキー・スノボで、残りの3~4割くらいが普通の登山者っぽかった。もう5月なんだけどなあ。
我々は普通の登山客なのでアイゼンを履いてザクザク登る。雪に覆われてルートが見えないので、木の枝に結び付けられた赤いテープが頼り。とはいえ意外とこのテープも発見するのが難しくて、帰りは時々道を見失ったりした。
小至仏山の脇をトラバースする残雪期ゴールデンウィーク限定ルート。上に登らなくていいのは楽だけど、もし滑って転んだりしたら下まで真っ逆さまだよなと思うとかなり怖い。
頂上の手前には唐突に雪が完全消滅したゾーンが現れる。短い区間なのでアイゼン履いたまま行ってもいいけれど、岩がちな地形なので念のために脱いでから行った。
一片の雪もないところをスノーボード担いで行く人の姿はなかなかにシュール。
頂上。ここも雪がないのでアイゼン脱いでストックと一緒に置いておく。
それなりに急な上りだったはずなのだけれど、雪とアイゼンのお陰で足元を気にせずにどんどん行けてしまうので、体感的にはかなり楽に登れた。
頂上でスキー板の準備をしている人々。
頂上からの眺め。尾瀬の湿原を挟んで向こう側に燧ヶ岳が見える。
帰りの小至仏山の脇のルート。やっぱり角度がだいぶ怖い。
おしまい。
最後に今回の反省点など。
- 車で移動する場合はクソデカバッグを持っていくと荷物の管理が楽
- クソデカバッグを持っていけるときは、ちょっとでも必要そうなものはガンガン放り込んでおくといい
- ズボンも汗まみれになりやすいので2本くらいあってもよかった
- 靴も2足以上あるといろんな地形に対応できて便利
- アイゼンを持っていくときはサングラス(防眩用)とスパッツ(ズボン保護用)もセットで持っていこう
- どうせならスノーシューも持っていってしまってもよかったかもしれない
- ちゃんとおいしいご飯が食べたい場合は事前の計画時にちゃんと予約をしておく
- しばらく引きこもっていたから肺活量が少し落ちた気がする
- YAMAPが機能豊富すぎて使いきれてない感じがあったので、もう少し使いこなしていけるようにしたい
- ブログに貼る写真が多すぎると、はてなフォトライフの容量を食いつぶしてしまいがちなので、予め写真を処理して容量を減らしておこう