見ていたアニメ(2024年冬クールほか)

 なろう系を中心に、これまではあんまり見なかったタイプのアニメをいくつか見ていたような気がする。

 

 

『葬送のフリーレン』

 『ぼっち・ざ・ろっく!』の斎藤圭一郎監督作品。わりとセリフで物語が進みがちな原作に、余韻たっぷりの画で感情を上乗せしたアニメ化だった。原作はちょうどアニメ化されたあたりまでは読んでいたけれど、生活感が薄くてやや寓話的な作風が自分には合わないなと感じて続きを追うのをやめていた。なのでアニメもあまり期待はしていなかったのだけれど、それでも毎週そこそこ楽しくみられた。良いアニメ化だったと思う。

 二次創作が山ほど生まれそうな作品で、自分のツイッターのログを見ていてもちょこちょことしたネタがいくつか書いてあった。一人一人のキャラクターが特徴的で、視聴者がストーリーの隙間を色々と想像したくなるような作りになっていたと思う。

 

『薬屋のひとりごと』

 原作が面白いらしいという噂だけはちょくちょく聞いてはいた作品。一応、架空中華風世界が舞台だけれど、資料提供が『古代中国の24時間』の柿沼陽平というあたりにガチ感がある。終盤に登場したシャンチーも日本シャンチー協会の協力で棋譜を作ってもらったりしたそう。第一印象としては『雲のように風のように』みたいなやつという感じ。最近の中華風後宮ものだと『後宮の烏』があったけど、あれよりは色々な意味で雰囲気がライト。韓国ドラマの『チャングムの誓い』からやたらと陰謀を企んでばかりの人々を抜いた感じというのが一番近いかもしれない。

 キャラデザが『トロピカル~ジュプリキュア』の中谷友紀子なので、ギャグシーンではわりと思い切った崩し方をする。同じ日テレアニメの『フリーレン』と比べると、よりアニメ的な演出が多用されていたと思う。4話の食事シーンのアニメーションや、18話で猫猫が壬氏を睨む一瞬のカットなど、時折はっとするようないい場面があったりして、アニメとして楽しい作品だった。

 悠木碧が気だるげなキャラを演じると、わりと川原泉作品の登場人物っぽくなるという変な気づきがあった。

 相貌失認の描写がだいぶファンタジックで面白いことになっていた。人の顔が覚えられないというのは、もしかしたらわからない人には結構わからない感覚なのかもしれない。

 

『悪役令嬢レベル99 〜私は裏ボスですが魔王ではありません〜』

 生前にやり込んでいたRPG要素のある乙女ゲーム世界へ裏ボスとして転生するお話。ストーリーはまあまあ面白かったので、EDだけじゃなくて本編も動画工房に作ってもらえるご予算があれば……と思った。コミカライズの絵柄が繊細できれいなだけに、そこがちょっと残念だった。

 魔王が黒髪だったからという理由で黒髪が差別されている国に黒髪として生まれ、使える魔法の属性が闇ということで周囲から偏見を持たれがちで、さらには対人関係が不器用という三重苦のヒロイン・ユミエラが趣味のパワーレベリングによって手に入れた力であらゆる障害を物理的にはねのけ突き進んでいく姿が痛快なアニメ。社会常識を力ずくで横紙破りしていくという点では、意外に『マッシュル』と近い話だったかも。

 話の中心はユミエラと辺境伯の子パトリックとのラブコメだけれど、コメディ要素の大半はユミエラの人間関係の不器用さから来る様々な行き違いが生む悲喜劇が担っている。パトリックは性格がちょっと『Fate』の士郎っぽいところがあって、ユミエラがギャルゲの3人目くらいのヒロインみたいな性格のキャラクターなので、乙女ゲーというよりはギャルゲをヒロインの視点で攻略するような話でもあった。

 ところでED曲まで作ったエレノーラの恋の行方は……。

 

『ループ7回目の悪役令嬢は、元敵国で自由気ままな花嫁生活を満喫する』

 ゲーム世界が舞台の『Lv99』よりも序盤のRTA感が強かったアニメ。『アンジェリーク』をプレイしていたはずが気がついたら『大航海時代』を攻略していたような感じ。

 毎回20歳になると様々な原因で死んでしまい、15歳だったころに巻き戻ってしまう主人公リーシェが、7回目の生をRTAしていたところ、毎回の自分の死因に強く関わっている敵国ガルクハインの皇太子アルノルトに見初められてしまい……というお話。主人公はこれまでの人生で毎回いろんな職業を経験してきており、周回プレイで培ったスキルが強み。とはいえ、侍女やってたから鍵開けが得意はさすがに無茶では。『はめふら』とか『薬屋』とかの女性向けなろうをいくつか履修したあとだと、主人公の能力の全部載せ欲張り丼っぷりに笑っちゃう。「自由気まま」と言うにはだいぶ忙しく奔走しているイメージだったけど、まあまあ面白く見られた。

 

『最弱テイマーはゴミ拾いの旅を始めました。』

 ある程度成長すると誰しもが何らかのスキルを授けられる世界を舞台にしたなろう系。スキルには星と呼ばれるものがついていて、これが多いほど良いスキルとされるのだけれど、主人公の女の子アイビーは前代未聞の星なしのスキルを授かったことから、村長を初め家族にも疎まれ、村を追われたどころか刺客まで差し向けられてしまうという超ハードモード人生を送っている。生存の厳しさみたいなのがずっと根底にある話だった。

 1話はアイビーが荒野を放浪するだけで終わって、設定はほぼすべてアイビーのモノローグだけで語られるというすごく変なアニメだった。境遇は相当に過酷だけれど雰囲気はわりと穏やかで、よくわからない奇妙さに、ちょっと惹きつけられるものがあった。

 アニメは、一度は社会から裏切られたアイビーが他者を信用できるまでを描いた話として綺麗にまとめた感じだけど、これは多分にアニメスタッフの力によるところが大きいのだろうなと感じられる。原作やコミカライズも少し見てみたけど、色々と若いというか粗削りなところが見受けられたので。アニメの方でも粗が隠しきれてないようなところはちょっとあった。ストーリー構成だけでなく、海外中心の作画でも品質を落とさない工夫も含めて、良いアニメ化だと思った。

 

『佐々木とピーちゃん』

 異世界ものや超能力バトルなど、色々なジャンルが重なってる作品。なろう系というよりは往年のラノベっぽさを感じてちょっと懐かしい気持ちになった。ジャンルのごたまぜ感は『六畳間の侵略者』に近いところがあるかも。

 ラノベ的な世界観でがんばるロスジェネ世代の薄給おじさん主人公を見て、我々も年を取ったなあという感慨を強く抱く。ゼロ年代は遠くなりにけり。それでもヒロインは十代のままなんだよな。


『メタリックルージュ』

 フリーレンやマルシルの耳を長くしたことで有名な出渕裕のアニメ。ルジュ(CV宮本侑芽)とナオミ(CV黒沢ともよ)の女の子二人組が未来の太陽系を舞台にあちこち旅する変身バトルもの、だったかな? オチは『シン・仮面ライダー』。戦闘シーンはあんまり面白いと思わなかったけれど、ルジュとナオミのやりとりが面白くて、それだけで最後まで見れたような感じがある。

 最初は『ニンジャスレイヤー』みたいな始まり方をしたけれど、最終的にはアジモフコードと呼ばれるロボット三原則的なもので行動を制限されたR.U.R的な人造人間ネアンたちの抑圧と解放を描いた話だった。当初の目的がだんだんと曖昧になっていったりするあたり、意外と『ソウルテイカー』っぽいアニメだったかもしれない。

 EDの歌の声が割と気に入ったので歌手のダズビーの音源とかをいくつか買ったりした。『ツンデレ悪役令嬢リーゼロッテ』のOPの人で、韓国の人。いわゆる韓国のミュージシャンかと思ったらニコ動の歌い手の出身らしく、ちょっと意想外な思いがした。

youtu.be

 

『SYNDUALITY Noir』2期

 2期は人とメイガスと呼ばれるファティマみたいなロボットたちの話をずっとやってて栄養価が高かった。

 主人公カナタとノワールの間に押しかけ女房してきたシエルは、富野ガンダムでよく見る強化人間ヒロイン的な類形のキャラなんだけど、その葛藤の表現に山本監督独特の味が出ていてとてもよい。シエルとの三角関係が歌の継承という形でノワールに収束していくのも、悲しいけどきれいなまとめ方だったと思う。

 全体を通してみると、メイガスと人類というテーマを基調として、謎のメイガス・ノワールの目覚めから自我の獲得までを描いたアイデンティティの物語だったと思う。面白かった。ラスボスによるメイガスラッダイト活動はちょっと唐突な感じもしたけど。


『勇気爆発バーンブレイバーン』

 1クール勇者系ロボとしてはちゃんとまとまりもあって佳作に入る部類ではあると思うけれども、ジャンルパロディとしてみると、特に終盤の2話は駆け足であらすじを追っただけの縮小再生産作品になってしまっていた。最終話で全てが猛スピードで予定調和に収まっていく感じはまるで「ソードマスターヤマト」のようであった。変にひねらずに真面目に作ったほうがマシだったし、ギャグとしてやるなら『ポプテピピック』で十分だった。

 序盤や中盤は、対話への試行錯誤の中で生じる齟齬を喜劇として扱うことで、笑いの中で色々なレベルのコミュニケーションの話を比較的丁寧にやっていた。例えば、1話や2話ではイサミと他者との間に信頼がないことからコミュニケーションが成立せず、結果としてイサミが悲惨な目に遭っていた。ボクシングの話やルルとおじさまの話も、概ねギャグの文脈の中でコミュニケーションを扱っていたと思う。そうしたコミュニケーションというテーマが味方の間でしか展開せず、敵との対話という形に発展させられなかったのも惜しいところだった。


『アイドルランドプリパラ』1-12話

 『アイドルタイムプリパラ』の続編としてゲームアプリ内で配信されているアニメ。まあアプリ自体が半分くらいこのアニメを配信するためのものだとも言えるかも……。

 例によってシステムトラブルで色々あって世界中のプリパラが一つのアイドルランドプリパラに合体してしまい、世の中からプリパラの存在が忘れ去られてしまったところからのスタート。ついでにゆいが封印された。

 1-12話は新しい主人公あまりと、彼女がかつて抱いていた厨二病的な夢から生まれたマリオの物語。『アイドルタイム』の、抑圧されていた夢を解放するというテーマの変奏として、過去の自分の夢と現在の自分の夢がかけ離れたものだったら? というテーマ。12話までで、ゆいの封印とあまりが来て以降の問題は一旦の解決。とはいえアイドルランド自体にまだまだ問題は山積み状態で……といったところ。果たして続きは作れるのか。そしてあまりやポォロロが誰かとユニットを組む日は来るのだろうか。

 『Gレコ』のときも思ったけど、4クールアニメをずっと作ってきた人に急に1クールや2クールで話を作れというのは無茶なんじゃないかなという気がする。終盤は3-4話必要な話を1話でまとめた感じがあって、ちょっと忙しい印象を受けた。